世界に名を轟かすパナマゲイシャの出発点であるLamastus Familyのエリダ農園をご紹介いたします。
Lamastus Family Estatesは、遡ることおよそ100年前の1918年にRobert Lamastus氏によって設立された農園グループで、エリダ農園、エル・ブーロ農園、ルイト・ゲイシャ農園という3つの農園から構成されております。
これら全ての農園はパナマの高地の異なる地域に位置しており、それぞれの農園は特有の気候と生態系、土壌の微生物によりそれぞれ異なった特徴を持っております。
中でも今回ご紹介するエリダ農園は、2018年、2019年に開催されたパナマの国際品評会において、ゲイシャ ウォッシュド部門で史上最高得点94.66点を獲得、ナチュラル部門では93.63点を獲得し両部門で2年連続優勝という快挙を成し遂げております。
その優勝ロットは、ウォッシュドで1ポンドあたりUS$661にて落札、ナチュラルは1ポンドあたりUS$803という当時の世界最高額(当時)で共同落札された伝説もあるパナマを代表する農園です。
エリダ農園はパナマを代表するコーヒー産地であるボケテ地区 アルト・キエルに位置しており、農場の約半分は、ヴォルカン・バル国立公園内に敷地がございます。
ヴォルカン・バル国立公園は、敷地内にコスタリカとの国境にもなっておりますバル火山を含み、異国情緒あふれる植物や鳥、蝶、哺乳類(トロピカル・タイガーなど)の聖地となっている国指定生態系保護区の一つです。
国立公園の目玉にもなっているバル火山は中米で最も高い火山のひとつで、標高3,475m、面積は14,000ha、標高によって7つの異なる気候帯が存在しております。
パナマでは1,800m以上の場所でコーヒーが栽培されることがあまりない中で、エリダ農園は標高1,670mから2,060mまでの高地でコーヒーを栽培しております。
この農園のコーヒーが特有の風味を醸し出す理由としては、他の農園と比べても以下の様な特徴が考えられます。
- ・豊かで柔らかな火山性土壌で栽培され、標高が非常に高い場所にある点
- ・高地であるが故に基本的に平均気温が低く、夜間は特に低温(10℃以下)となり、コーヒーチェリーが良く熟されるために要する期間が1ヶ月程度長く、それにより豆の発育が良くなる点
- ・独特なマイクロクライメートによりコーヒーに有益な影響をもたらす微生物や酵母、菌類が活発に働く点
- ・乾季には霧がかかり、生育にちょうどいい湿度が保たれている点
- ・コーヒーの木を取り囲む原生林により適度な日影が作られ、天然のシェードツリーとなっている点
ご存じの通りコーヒーの品質は、コーヒーが栽培されている標高に密接な関係があり、標高が高ければ高いほど品質は良くなることが知られております。
しかし気温が10℃以下の状態が長く続くと、木は成長を止めてしまうため、その狭間となるギリギリの標高でコーヒーを栽培していることも特徴の一つで、これらの要因が重なり合うことで大変優れたカップを生みだします。
この農園ではゲイシャ、カツアイ、ティピカを栽培しており、今回はそのうちもっとも有名なゲイシャ種を昨年同様のナチュラルに加え、発行感は大人しめながら、洗練られたクリーンさが際立つウォッシュドの2商品をご紹介。
是非、世界最高峰のパナマゲイシャをお試しくださいませ。
【Lamastus Familyの歴史】
初代のRobert Lamastus氏は1904年に、アメリカ合衆国ケンタッキー州から運河建設のためにパナマへ移住、1914年の運河完成までそこで働いておりました。
その後彼は創設年である1918年にアルト・キエルに土地を購入、アラビカ種コーヒーの栽培を始めたことがきっかけでつくられたのがこちらのエリダ農園です。
その後、2代目のThatcher Lamastus氏、3代目のWilford Lamastus Sr.氏と受け継がれ、現在は4代目のWilford Lamastus Jr.氏が農園主を務め、4世代にわたってコーヒーを生産し続けている伝統ある農園です。
そんなエリダ農園ですが、2代目のThatcher氏が農園主を務めていた時のこと、1990年代のコーヒークライシスがパナマのコーヒー生産にも影響を及ぼし、存続の危機に晒されました。
この時Lamastus家はコーヒー以外の代替作物に目を向け、財政危機を補うべくエリダ農園を売りに出すことを決めました。
しかし、当時は作物の品質ではなく量に関心を示す買い手にとって、バル火山の標高1,700m - 2,300mの高地に位置するこの農園には買い手が付かず、エリダ農園の代わりに、標高1,100mに位置するブウテ農園に買い手が付き、Lamastus家の意に反して、この農園を売りに出すことに決めます。
当時はエリダ農園が世界最高額のゲイシャを生産することになるとは誰も想像していなかったため、思わぬ形でエリダ農園は救われることになったのです。
その後、3代目のWilford氏に引き継がれ、現在の農園主である4代目であるWilford Jr.氏は、アメリカ合衆国でマーケティングを学んだ後、28歳のときに帰国、近所のコーヒーハウスで修業を積み、数々のバリスタ大会で賞を獲得、2019年のブリュワーズ・カップ・パナマでは優勝するほどバリスタの知識も持った方です。
そんな彼が広めた同農園を代表する精選方法であるAnaerobic Slow Dry(ASD)精製は、エリダ農園を数々の賞へと導き、現在の知名度を誇っております。
昨年同様、同じ嫌気発酵のゲイシャだけでも10種類以上のロットサンプルが送られてきた中、ロットによってカップ傾向にかなりの違いがありました。
その中でも弊社でカップを行い、厳選に厳選を重ねたナチュラル・ウォッシュドそれぞれ1ロットずつのみを買付しておりますので、是非この機会にお試しくださいませ。
※なお今回ご紹介する商品は実際にBest of Panamaを受賞したロットとは異なります点ご注意くださいませ。